多汗症の患者さんに良くある訴えには次の様なものがあります。
- ワキに汗ジミができて人目が気になる。
- 周囲の目が気になって、学業や仕事に集中できない。
- 汗のにおいが周囲に不快感を与えているのではないかと心配する。
- あまり、人間関係がうまくいかない
- 常にタオルが手放せず、一日に何度も制汗剤を塗り直す。
- シャツを着替えたりする手間が大変。
- 緊張すると汗が出はじめ、意識するともっと出る。
- ワキ汗パッドが手放せない。
- 汗が目立たない色をいつも選ぶので、好きな色の服が着られない。
- ゆったりしたデザインの服を選ばなければならない。
- 白シャツや下着が黄ばんでしまって、すぐに買い替えなければならない。
- 冬に着るセーターも、汗で目詰まりしてしまう。
- 着物の袖が汗で汚れてしまうが、洗えない。
- ワキガの手術をしてにおいはとれたのだが、汗の量の多さは変わらず、気になる。
- 手の汗で、試験中にプリントや解答用紙が濡れてしまう。
- 手の汗で、握手をする時に、抵抗があり気になってしまう。
多汗症について
詳しくはこちら→「わき汗に関するお知らせ」
ワキ汗が多く出る病気のことを「腋窩多汗症(えきかたかんしょう)」といいます。
腋窩(えきか)とは、ワキの下のことです。
ワキの下はもともと汗腺が多いうえに、緊張やストレスなどの精神的な刺激と、気候や運動による温熱刺激の両方で発汗が促進されるため、汗を多くかきやすい部位です。
手汗が多く出て、生活の質が悪くなり、精神的にも辛い気持ちになることがあります。明らかな原因が存在しない手汗を、「原発性手掌多汗症」と呼びます。今までは、腋窩のみ保険治療外用薬がありましたが、ついに令和5年6月1日に、手掌多汗症の治療薬が処方できるようになりました。
日常生活で困るほど多くの汗が出る疾患「多汗症」
人間のからだは、暑さや運動によって体温の上がりすぎを防ぐため、汗をかいて熱を発散させています。また、精神的な緊張やストレスによって汗をかくこともあります。
体質で汗が多いという人はいますが、ワキ汗で人目が気になるなど、日常生活で困るほど汗が出る場合は『多汗症』という病気があります。多汗症の症状があらわれやすいのは、手のひらや足の裏、ワキの下、額など、汗腺が密集している部位です。
多汗症に悩む人は、思春期から中年世代までの社会的活動が盛んな年代に多いといわれています。男女の比率はほぼ同等とされていますが、日本国内の調査では男性患者のほうがやや多いと報告されています*。
明らかな原因が存在しない「原発性多汗症」と、何らかの病気や使用している薬が原因となる「続発性多汗症」に分けられます。続発性多汗症は、原因となる病気を先に治療する必要があります。
多汗症の治療法
塗り薬(外用薬)保険適応
原発性多汗症のガイドラインに基づき、1日1回ワキの下に塗ります。毎日塗り続けることで、徐々に効果が現れます。医師の診察のもと、診断基準に基づき処方されるお薬です。健康保険が適用されます。
エクロックゲル5%、ラピフォートワイプ2.5%(原発性腋窩多汗症)わき用です。
アポハイドローション20%(原発性手掌多汗症) 手あせ用です。
ボトックス療法
交感神経から伝達される汗を出す信号を、ボトックスでブロックして、過剰な発汗を抑える治療法です。薬はワキに直接注射します。ボツリヌス菌がつくる天然のタンパク質を有効成分とする薬が使われます。1回注射をすると効果は、3-9ヶ月持続するので、年1~2回程度の治療で汗を抑えることができます。「どれくらい汗が気になるか」「どれくらい日常生活に支障があるか」といった基準によって、ワキ治療のみ健康保険が適用されます。その他の部位でのボトックス治療は、自費になります。
費用:約30,000円(保険適用)
多汗症の手術療法との比較
多汗症の手術療法には、低位交感神経遮断手術(ETS手術)があります。
メリットとしては
- ワキからの異常な汗をある程度止めることができます。
デメリットとしては
- 神経遮断手術になり、身体への負担が大きい
- 手術に伴う代償性発汗について理解し、手術を後悔しないように注意が必要
- 代償性発汗を考慮すると、片方ずつ実施するのが妥当で、手術を2回行う必要がある。
※手術は保険適用で、約9万円/1回
※両方を1度に手術することも可能ですが、身体への負担と代償性発汗の理解が必要です。 - ワキガの治療ではないので、臭いの問題は解消しない
当院の治療方針としては、ワキの臭い・脇汗の問題は、手術療法よりは、毎年治療が必要ですが、
汗をかく季節に対応した治療方法:ボトックス療法が良いと考えております。