SAS(睡眠時無呼吸症候群)とは
睡眠時に、大きないびきと共に一時的に呼吸が止まるのが、睡眠時無呼吸症候群です。医学的には、無呼吸(10秒以上呼吸がとまる)や低呼吸(呼吸が弱くなる)が、1時間に5回以上ある状態をSAS(睡眠時無呼吸症候群)と呼びます。睡眠時に空気の通り道である気道が狭まっていびきとなり、気道が完全にふさがると無呼吸になります。
SAS(睡眠時無呼吸症候群)になると、睡眠の量と質が低下することで、日中の強い眠気、慢性的な疲労感、集中力低下などによりQOL(生活の質)が低下し、大事故を招く可能性もあります。実際に、大きな列車事故や交通事故などで、運転者がSAS(睡眠時無呼吸症候群)であったことが判明しているケースがいくつもあり、公共の安全に関しても影響が大きい病気だと言えます。
また、SAS(睡眠時無呼吸症候群)では低酸素状態が続きますので心臓や血管に大きな負担がかかります。そのため、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧、不整脈なども起こりやすくなります。さらに、低酸素状態と睡眠不足がストレスとなって、インスリンなどのホルモン分泌が乱れ、糖尿病や脂質異常症などのリスクも高まります。
SAS(睡眠時無呼吸症候群)の症状
大きないびきはいっしょの部屋で眠る家族がいる場合には、家族に指摘されることで気付けますが、一人暮らしや家族と離れた寝室で眠っている場合、なかなか気付くことができません。
こうした症状があったら、SAS(睡眠時無呼吸症候群)の可能性があります。
- 週に3日以上、いびきをかく
- ドアの外まで聞こえるほど大きないびきをかく
- 睡眠時の無呼吸や苦しそうにあえぎながらの呼吸を指摘された
- 二重あご
- 高血圧
- 日中、ついウトウトしてしまうことがある
- 日中、急に強い眠気に襲われることがある
- 睡眠中、何度かトイレに起きるようになった
- 息苦しくて目が覚めることがある
- 身体を動かすと息切れする
- 口が乾く
- 目覚めた時、のどがいがらっぽい
- 目覚めがよくない
- 何時間眠っても、熟眠感がない
- 集中力がなくなった
- 倦怠感がある
SAS(睡眠時無呼吸症候群)の原因
太っている人に多いという印象が強いと思いますが、あごが小さいとSAS(睡眠時無呼吸症候群)になりやすいため、痩せた方でもなる可能性があります。太った患者さまは約6割以上とされていますが、残りは決して太っていない患者さまなのです。女性はホルモンの関係からSAS(睡眠時無呼吸症候群)になりにくいのですが、閉経後には増えてくる傾向があります。
- 太っていてあごや首に脂肪がついている
- 花粉症、アレルギー性鼻炎などでよく鼻が詰まる
- 下あごが小さい。後退している
- アデノイドなどの病気によって扁桃腺肥大がある
- アルコールの影響でゆるんだ筋肉がのどをふさぐ
SAS(睡眠時無呼吸症候群)の合併症
睡眠時に低酸素血症や高炭酸ガス血症を起こすため、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病と大きく関わりを持っています。また、多血症、不整脈、虚血性心疾患、心不全、脳血管障害、肺高血圧症、インポテンツなどの合併症を高率で引き起こす可能性があります。
SAS(睡眠時無呼吸症候群)の治療
減量や生活習慣改善なども重要ですが、こうした治療が効果を発揮するのは厳格に指導を守った場合でも最低数ヶ月が必要ですし、それで解消する保証はありません。SAS(睡眠時無呼吸症候群)が中等症から重症の場合は、「CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸)療法」での治療が適しています。CPAP療法は、はじめたその日から快適な睡眠が得られる治療法です。
CPAP療法とは
鼻に装着したマスクから適切な圧力をかけた空気を送り込むことで、気道を確実に広げます。睡眠時に装着することで、ほとんどの方が快適な睡眠を得られるようになります。ただし、装置の装着感や音が気になって継続が難しい場合もまれにあります。また、鼻炎などがある場合には先に耳鼻咽喉科を受診してそれを治してからでないと十分な効果を得ることはできません。さらに、下あごの問題がある場合には、歯科で矯正を受けることで改善する場合もありますがこれには長い治療期間が必要です。
CPAP療法は長期効果と安全性に関する十分な検証がされており、高い効果がある治療法ですが、気道の状態を根本的に治療するものではないため、外来で治療を継続しながら行うことになります。
日常生活での注意点
睡眠薬の使用は気道をふさがりやすくする場合があるため、注意が必要です。必ず医師に相談してから服用してください。
アルコールや喫煙は気道をふさがりやすくします。できるだけ控えましょう。
肥満はSAS(睡眠時無呼吸症候群)の大きな原因になっています。食事療法や運動療法で生活習慣を改善しましょう。
検査について
睡眠に関する問診の後に、睡眠障害を起こす生活習慣病等の診察を行って睡眠呼吸障害の検査が必要だと判断されたら、スクリーニング検査を行います。
スクリーニング検査では、鼻口気流、気管音、血液中に含まれた酸素の量を現す動脈血酸素飽和度などを測定します。簡易型装置による検査であり、ご自宅で受けていただけます。呼吸運動や体動、心電図などを同時に調べる場合もあります。
スクリーニング検査でSAS(睡眠時無呼吸症候群)の可能性が高いと判断されたら、入院によるさらに詳しい終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査を行います。身体の各部分にテープで電極を貼り付けて眠る検査です。これで、脳波、呼吸、眼球、筋肉の動きなどを記録し、睡眠中の低酸素状態、脳波による覚醒状態、鼻口気流の途絶と再開の状態、胸腹部の呼吸運動などを調べて確定診断を行います。
なお、スクリーニング検査でAHI40以上、確定診断でAHI20以上になるとCPAP療法は保険診療が適用されます。AHIは、睡眠1時間あたりの無呼吸や低呼吸回数です。